Hara Psychiatric Clinic
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主な疾患 disease

うつ病・うつ症状

うつ病、うつ状態はさまざまなことが原因で、脳の働きに必要な物質が少なくなってしまっている状態です。簡単に例えるならば、エネルギー不足になってしまい、体中の各臓器を省エネで動かすため通常の機能を発揮できず、パフォーマンスが落ちてしまいます。気分の症状も身体の症状も現れます。

主な症状

<気分の症状(脳のエネルギー不足)>
  • 気分が落ち込む
  • 不安で落ち着かない
  • 何をしても楽しくない
  • 意欲が出ない
<身体の症状(脳以外のエネルギー不足)>
  • 眠れない、疲れが取れない
  • 胃が痛い、吐き気、食欲の低下
  • 頭痛や肩こりなど身体の痛み
  • めまいやしびれなど

治療

うつ病、うつ状態の治療は、エネルギーを回復させること、エネルギーを消費しすぎないようにすることです。具体的には、まずは休むことが大事になります。お薬(抗うつ薬を中心に睡眠薬や気分安定薬など)も使い、より効率よくエネルギーが溜まりやすく手助けをします。休養するための環境について考えることも重要です。次に、エネルギーを消費しすぎないようにするには、主には心理・精神療法や環境調整などになってきます。ただ、うつ状態が強いときは動けなかったり、何も考えることができなかったりするので、症状が強い場合はある程度回復してから取り組んでいきます。

双極性障害

双極性障害は気分が高揚し自信が増したり、イライラしやすくなったりする躁(そう)状態と前述のうつ状態とを繰り返し、気分に波が見られる病気です。うつ状態がエネルギー不足により機能低下しているとするならば、躁状態はエネルギーを通常よりもたくさん使って機能が亢進している状態です。そのため、自身ではいつもより調子がいい、くらいにしか感じないですが、周りからは普段よりも異常なくらいやりすぎているように見えることもあります。そして、多くのエネルギーを使ってしまうため、躁状態の後にはうつ状態になってしまうこともあります。

主な症状

<躁状態の症状>
  • テンションが高く、楽しくなる
  • イライラしやすい、怒りっぽい
  • 自分はなんでもできる気がする
  • 次々に考えが浮かぶ

という躁状態と、前述のうつ状態が繰り返され、気分の波が見られます。

治療

双極性障害の治療としては、まずは現在の症状を改善させること、そして今後の再発を予防することが目標となります。そのためには、薬物療法と疾患教育などの心療社会療法が主となります。薬物療法としては気分安定薬、抗精神病薬を中心に使います。

発達障害(神経発達症)

発達障害とは、生まれてからの脳機能の発達に偏りが見られる障害です。得意なこと、不得意なことのアンバランスが生まれ、過ごす環境、周囲の人との関わりにおいて困りごとが生まれ、生活に困難が発生します。困りごとは十人十色で、周囲には気づかれにくく、時には「自分勝手」「わがまま」などと捉えられ、批判されてしまうことも少なくありません。

主な症状

  • コミュニケーションが苦手
  • 空気を読むのが苦手
  • 冗談、雑談が苦手
  • こだわりが強い、融通がきかない 
  • 同時に複数のことができない
  • 音、においなどに敏感
  • ミスや忘れ物が多い
  • 集中が続かない
  • 順番が待てない
  • 読むこと、書くことが苦手

ただ、これらは程度の差はあれ、誰しもに見られることで、当てはまるものがあるからといって発達障害ということではありません。いくつかの特徴が同時に見られたり、他の特徴と比べると著しく苦手である場合に発達障害が疑われます。

治療

生活の中での困りごとを聞きながら、必要に応じて心理検査などを行って、まずは自身の得意、不得意などの特徴を知ること、周囲の人に知ってもらうことが大事になります。その上で、特徴に合わせた工夫や対処方法を考えていきます。苦手なことでも練習によってある程度できるようになることもあります。周囲にも協力してもらい、得意なことを生かし、苦手なことはできるだけ回避できるような環境に調整していくことも重要です。
薬物治療については、注意欠如多動症(ADHD)に対してはいくつかの治療薬があり、自閉スペクトラム症(ASD)に対しては症状を和らげるために向精神薬を使用する場合もあります。

統合失調症

統合失調症とは、自分の考えや気持ちをまとめることが難しい状態になってしまう病気で、幻覚や妄想といった症状や感情が鈍くなるなどさまざまな症状が見られることがあります。詳しい原因はわかっていませんが、脳内の情報伝達をする物質の調節がうまくいかなくなることが関係しているのではないかと考えられています。

主な症状

  • 人に見られている感じがする
  • 悪口を言われている気がする
  • 誰かに操られている感じがする
  • 考えを(人に)抜き取られる
  • 混乱して考えがまとまらない
  • 動こうという意欲が湧かない
  • 感情が鈍くなった
  • 頭の回転が遅くなった

治療

統合失調症治療の基本は、薬物療法と心理社会療法です。薬物療法については、抗精神病薬を中心に行い、症状の改善と再発予防を目指します。また、心理社会療法として、疾患教育から作業療法、生活技能訓練、就労訓練など多職種による精神科リハビリテーションを行っていきます。

不眠症

不眠症とは、寝つきが悪いなど、睡眠がうまく取れない状態となり、そのために日中の倦怠感、意欲や集中力の低下、さまざまな身体不調が出現する病気です。「不眠」は誰でも経験しますが、自然に再び眠れるようになることが大半です。しかし、長く不眠が続いているままにしていると、なかなか回復しにくいと言われています。

主な症状

  • 寝つきが良くない(入眠困難)
  • 何度も目がさめる(中途覚醒)
  • 起きたい時間よりかなり早く目覚めてしまう(早朝覚醒)
  • 寝た感じがしない(熟眠障害)

治療

ストレス、からだの病気、こころの病気、服用しているお薬の影響など薬剤によるもの、環境や生活リズムなどさまざまなことが原因として考えられます。不眠症の治療で最も大切なのは、まずはそういった原因を取り除いてあげることになります。また、睡眠に対しての正しい理解のために睡眠指導も行っていきます。症状に合わせて睡眠薬を選択し、処方をすることもあります。

認知症

認知症とは、何らかの原因により脳神経に障害をきたし、記憶力や物事を判断する力が低下することで日常生活に支障をきたしてしまう疾患です。誰しも年齢とともにもの忘れや判断力の低下を実感することはあると思いますが、認知症は「年齢によるもの」を超えた脳の機能の低下で、日常生活への手助けが必要になることが多いです。主な認知症の種類としては「アルツハイマー型認知症」「脳血管型認知症」「レビー小体型認知症」「前頭側頭型認知症」などがあります。

主な症状

  • もの忘れが気になる
  • 何度も同じことを聞いたり話したりする
  • 感情がコントロールしにくくなった
  • ものを盗まれたと大騒ぎになることがある
  • ぼーっとしている
  • 置き忘れ、しまい忘れが目立つ

治療

現在では認知症を根本的に治療する方法はまだありませんが、一部の認知症については進行を遅らせる薬が使用できます。また、二次的に現れる精神症状(不眠、抑うつ、イライラ、妄想など)に対しては、それぞれの症状を和らげる薬物療法を行います。また、非薬物治療も重要で、いわゆる「脳トレ」といわれるようなゲームやパズル、人と会話をすること、体を動かすこと、音楽など芸術に触れること、回想法etc. 様々なことを無理なく取り組んでいけることが大切です。

パニック障害

パニック障害とは、なんのきっかけもなく突然、頭が真っ白になり、息苦しさ、動悸、発汗、めまい、手の震えなどの発作(パニック発作)が起こる病気です。はじめてこの発作を経験したときは「このまま死んでしまうのではないか」という恐怖感を抱くこともあります。発作が繰り返されることにより、また起こるのではないかという心配(予期不安)が出現することもあります。発作が起きた時に逃げ場がない人混みを避けたり、車や電車やバスに乗れなくなる、外出できなくなるなど、生活に支障をきたしてしまうこともあります。

主な症状

  • 動悸や発汗、息苦しさなどの発作が急に起こる
  • 吐き気や嘔吐などの症状
  • 「死ぬんじゃないか」という恐怖感
  • 自分がコントロールできなくなる

治療

発作が起こらないような状態を目指すこと、その状態が維持できることを目指して薬物療法を行なっていきます。セロトニンという神経伝達が関与していると考えられており、S S R I(セロトニン再取り込み阻害薬)やセロトニンの働きを強める抗うつ薬などを使用します。また、認知行動療法を行うことや、睡眠不足や飲酒によって発作が誘発されることもあるため、生活改善に向けた指導なども行います。

強迫性障害

強迫性障害とは、ある考えが自分の意思に反して繰り返し頭に浮かんできて(強迫観念)、それを取り去ろうと何度も同じ行動を繰り返してしまう(強迫行為)ことで生活に支障が出てしまう病気です。自分でもバカバカしいと思っていながらも止めることができなかったりします。日常生活でのストレス、元々の性格などさまざまな要因が影響していると考えられていますが、はっきりとした原因はわかっていません。

主な症状

  • 繰り返し同じことが気になる
  • 戸締りや火の確認を何度も繰り返す
  • 手洗いが止まらない
  • 誰かを傷つけたかもしれないと不安になる
  • ものの位置や対称性が気になる
  • 不吉な数・幸運な数が過剰に気になる

治療

強迫性障害の治療は薬物療法と認知行動療法を組み合わせて行うと効果的であると言われています。薬物療法では主に抗うつ薬を、特にS S R I(セロトニン再取り込み阻害薬)を使用します。認知行動療法では、暴露反応妨害法という強迫観念による不安に立ち向かい、強迫行為をしないで我慢をするという行動療法を行います。